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証券経済研究 第81号(2013年3月)

統制経済下における生保会社の公債投資と国債消化政策

深見泰孝(当研究所研究員)

〔要 旨〕
 本稿は,生保会社が戦時体制下で,逆ザヤ状態にある国債の大量保有を,なぜ業界が申し合わせたのか。その背景にはどのような事情があったのか。また,政府は生保業界に対して,どのような国債消化政策を採ったのか。そして,併せて国債消化を促進するための国債優遇策が採られていたのか,という点について検討した。
 高橋財政以降,大量発行された国債の消化は大きな問題であった。特に,高橋の死後,蔵相に就任した馬場鍈一が,国債の市中消化率が低下していたにもかかわらず,積極財政を展開した昭和11年以降,新たな国債の消化先が必要となった。従来,生保会社は,採算上の問題から国債投資に積極的ではなかった。そこで馬場は,生保資金を国債消化資金とすべく,商工省に生保会社の資産運用を共管するよう提議する。しかし,商工官僚は,大蔵省から生保会社監督への干渉を受けることを嫌い,従来の監督方針である,生保各社の自主性を尊重することを放棄し,生保会社の資産運用への干渉を始める。
 当初こそ,生保会社が自主的に国債保有を増加するよう慫慂していたが,生保会社の国債保有は増えず,そのことに対する不満が高まってきた。そして,北支事変の勃発を契機に,国債の強制割当が行われる。しかし,強制割当によって,生保会社の採算は悪化する。そこで,優遇策として契約者配当率の引き下げが行われた。銀行に対する優遇策は,国債の途中売却を抑制しつつ,流動性を提供するものであり,この優遇策は,銀行に対するそれとは明らかに異なっていた。そして,銀行に対して強制割当が行われたのも,昭和15年のことであった。
 このように,生保会社に対しては,銀行とは異なる国債消化政策および国債優遇策が採られていた。その理由については,銀行と生保会社の国債保有に対するインセンティブの違いと,その保有する資金特性の違いに起因すると結論づけた。

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