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証券経済研究 第81号(2013年3月)

なぜ赤字国債の無制限発行が可能になったか

中島将隆(甲南大学名誉教授・当研究所特別嘱託研究員)

〔要 旨〕
 日本の財政資金は,今日,歳入の半分を国債で調達している。財政膨張によって税収不足となり,不足する財政資金を赤字国債発行で無制限に調達する構図となっている。財政法第4条は赤字国債の発行を禁止している。にもかかわらず,なぜ,赤字国債の無制限発行が続いているのだろうか。
 振り返ってみると,赤字国債の発行が開始されたのは昭和50年度(1975)からである。昭和55年度(1980)には7兆3150億円の赤字国債が発行され,国債依存度は32.6%となった。しかし,昭和55年度をピークに,その後,赤字国債発行額は減少する。赤字国債依存体制脱却が財政目標となり,平成3年度(1991)から平成5年度(1993)まで,赤字国債の発行実績はゼロとなった。赤字国債依存体制から脱却することができたのである。
 ところが,平成6年度(1994)から減税特例公債という名前で赤字国債の再発行が開始され,平成10年度(1998)から赤字国債の無制限発行体制へ移行した。平成10年度の赤字国債は当初予算で7兆1000億円であったが,補正後では16兆9500億円となり,国債依存度は当初の20%から40.3%へと倍増した。平成10年度以降今日まで,不足する財政資金は無制限に赤字国債で調達され,その結果,政府債務残高は短期間に急速に膨張した。
 なぜ,赤字国債の無制限発行が可能になったのだろうか。この疑問を解き明かすには,赤字国債発行の開始時点から今日までの推移を再検討する必要がある。財政法の禁止規定にもかかわらず,なぜ赤字国債発行が可能になったのか,昭和50年代中ごろから赤字国債発行額を削減できたのは何故であったか,赤字国債依存体制から脱却することが出来たにもかかわらず平成10年度から赤字国債無制限発行体制へ移行したのは何故か,こうした疑問を解決するには国債管理政策の変化,国債をとりまく金融市場の変化,政策決定プロセスの変化を検討していくことが必要だろう。

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