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証券経済研究 第80号(2012年12月)

金融制度改革と連邦による先取
―DIDMCA成立過程における先取をめぐる議論について


磯谷玲(宇都宮大学国際学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 1980年預金金融機関規制緩和・通貨統制法(Depository Institutions Deregulation and Monetary Control Act of 1980,以下DIDMCA)は1980年代以降続く,制度改革や金融自由化の嚆矢であり,後の金融機関あるいは金融規制のあり方に多大の影響を与えた。
 DIDMCAの全体像に関しては,これまでにも多くの研究が行われてきた。また近年では,略奪的貸付や個人レベルでの債務拡大などとの関係に着目した研究が行われ,またDIDMCAでとられた自由化の経路について批判的な意見も出されている。リーマン・ショックや金融危機にいたる流れに鑑みるならば,DIDMCAにより行われた金融規制の変革やその検討は大きな現代的意義を持っていると考えられる。
 本稿では,DIDMCAの成立にいたる諸契機を概観した上で,先取に関わる議会証言を検討し,成立過程に限定して考察した。ここでいう先取とは,州によって行われた金利上限規制を連邦法によって無効化し,連邦による規制に統一化する行為を指す。
 高金利下で伝統的な金融規制政策には,住宅金融の不安定化や貯蓄者間の不均衡等様々な問題が現出した。
 こうした状況に対し,金融自由化という方向性が提示され,その手段のひとつとして先取という方法が提案されたのである。これに対し,一方では現行の制度には問題があるという認識は共有するものの,あくまでも州による規制は州によって対応されるべきものとして,州による問題解決を主張し,反対する意見があった。他方では,二元銀行制度の維持,安定的な住宅供給の政策的重視を目的とした場合,各州による分散的な金利規制を全米的な,統合されたものとするという必要性が主張された。

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