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証券経済研究 第79号(2012年9月)

占領期末の日本における法人税増税と租税特別措置・引当金制度の拡大

村松怜(慶應義塾大学大学院後期博士課程・日本学術振興会特別研究員)

〔要 旨〕
 本稿の課題は,シャウプ税制導入以後の1951年の補正予算に際し,法人税率の引上げと同時に租税特別措置・引当金制度等の急激な拡大が行われるに至った過程を明らかにすることである。
 51年度補正予算における重要な課題は所得税の減税にあった。しかし,独立に伴う財政負担の増大が見込まれ,それは困難であると見られていた。一方,特需に伴い企業の利潤が増大する中,超過所得税復活の議論が行われ,同時にインフレの抑制が強く求められる状況にあった。この状況を機に法人税の増税を決定したのが蔵相の池田勇人であった。池田はそれにより特に減税財源を捻出しようとしたのである。
 それに対して反対の立場をとったのが主税局長の平田敬一郎であった。平田は法人税率の引上げには反対であり,特別措置の導入によってその負担増大を緩和しようとしたのである。その結果,行われたものが特別償却の拡大や価格変動準備金の導入であった。
 これまでの研究では租税特別措置の拡大が強調されてきたが,むしろ財源の確保という意味で,法人課税全体として増税となっていたことが当時の問題として重要なことであった。こうして,法人課税に関する「資本蓄積型税制」は,法人税負担が増大される中で形成されてくるのである。一方,この特別措置・引当金は60年代以降,「不公平税制」として強い批判の的となり,財政危機下における増税を挫折させる一つの要因を形成した。

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