トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2012年度 >> 第79号(2012年9月)

出版物・研究成果等

当研究所の出版物の購入を希望される方は、「刊行物購入について」をご覧下さい。

証券経済研究 第79号(2012年9月)

日米のダブル・ボトムライン投資ファンド(下)

松尾順介(桃山学院大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 ダブル・ボトムライン(DBL)とは,「2つの収益」を意味し,そのひとつは,経済的・金銭的収益(ファースト・ボトムライン)であり,もう一方は,地域社会や環境への貢献(セカンド・ボトムライン)である。場合によっては,地域社会への貢献と環境面の貢献を区別し,3つの投資目標を設定しているものは,トリプル・ボトムラインとされることもある。
 近年,このように2つの投資収益や投資目標を設定した投資は,ダブル・ボトムライン投資といわれ,それを明確に設定した投資ファンドが現れている。そのような背景として,民間企業においては株主利益最大化だけでなく,企業の社会的責任(CSR)が重視され,環境対策や社会貢献などの社会貢献が評価されるようになったことが指摘できる。
 日本では,風力・小水力発電ファンド,農林業ファンドなどが設立されている。これらのファンドには,様々な種類があるが,一般の個人から出資を集めているものも多く,それらのファンドでは,金銭的な収益だけでなく,地域や環境面での貢献を目指した投資が行われており,これはDBL投資とみなすことができる。さらに,今後もこのような投資が増加するものと思われる。
 他方,米国では,不動産を対象としたプライベート・エクイティ・ファンドの形態で,DBL投資ファンドが設立され,拡大している。これらのファンドには,低所得地域における地域活性化を目的としたものが多く,地域の雇用促進やインフラ投資,さらに環境改善に寄与しているとされている。
 本稿では,まず,米国のDBLファンドについて,その基本的な内容や類型を概観した上で,DBLファンド運用のコンセプトやスキームを紹介する。次に,日本においては,このようなファンドとしては,風力発電・小水力発電ファンド,さらに農林業ファンドなどが設立されている。また,かなり以前から地域再生ファンドも設立されている。これらを取り上げ,日米におけるDBLファンドの特徴を比較・検討する。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。