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証券経済研究 第78号(2012年6月)

戦前期の株価維持機関の活動―生保証券を中心に―

深見泰孝(当研究所研究員)

〔要 旨〕
 株価維持は,現在の株式市場でもその方法や実施主体は異なるものの,依然として行われている。その淵源は,戦前期まで遡ることができる。本稿で取り上げた第二次生保証券は,昭和10年代前半に活動した。当時は,準戦時体制から戦時体制へ移行する時期で,日中戦争勃発とともに,株価維持は生産力拡充計画を遂行する上でも,重要な役割を担うようになる。そこで,本稿では,監督官庁の生保業界による株価維持への態度の変化に留意しつつ,国策遂行と営利性の相克にも注目しながら,第二次生保証券の事例を中心に,戦前期の株価維持機関の活動の一端を明らかにすることを課題に考察を行った。
 第二次生保証券は,昭和10年に設立された。設立準備段階では,株価維持機関として設立することが目論まれたが,商工省の反対によってこれを断念し,第二次生保証券は,共同投資機関として設立された。設立以来,日中戦争勃発まで株価維持は一切行われなかったが,日中戦争勃発とともに商工省の生保業界による株価維持への態度が軟化。むしろ,その後は商工省が第二次生保証券に買出動を要請するなど,日中戦争を契機にその態度は大きく転換した。第二次生保証券は,このような監督官庁の態度が変化したことを受け,株価維持活動を実施した。ただ,生保証券の買入銘柄は,生産力拡充には直接関係しない,生保各社の決算対策の側面を見せるものもあり,その点で国策遂行支援のみならず,生保各社の利潤動機に基づいた買出動も行われていたことを明らかにした。

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