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証券経済研究 第77号(2012年3月)

家計の金融資産選択と税制
―フローベース需要関数による分析―


井上智弘((財)電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)
上條良夫(早稲田大学高等研究所助教)

〔要 旨〕
 本稿では,総務省『家計調査』における家計の金融資産データに基づいて上場株式等の配当・譲渡益に対する10%の軽減税率の影響を分析することで,税制が家計の危険資産保有をどれだけ促したのかを定量的に明らかにする。先行研究の大半はストックデータに基づいた分析であるが,わが国家計の金融資産取引の現状を踏まえ,本稿ではフローデータに基づいた金融資産需要関数の推定を行う。分析は三段階に分かれる。第一段階では,金融所得税として,利子課税・配当課税・株式の譲渡課税の実効税率を推計し,家計が直面する税負担を見る。第二段階では,先行研究の理論モデルからフローベースの金融資産需要関数を導出し,第一段階で推計した実効税率から求められる税引後収益率と家計の資産需要データを用いて関数の推定を行う。第三段階では,軽減税率が廃止された場合の配当・譲渡益に対する実効税率の上昇幅を計算し,第二段階の推定結果を用いて,軽減税率の廃止が家計の安全資産・危険資産の選択に与える影響をシミュレートする。
 以上の分析の結果,軽減税率は家計が直面する配当・譲渡益の実効税率を10%ポイント程度引き下げ,危険資産保有を定性的には促すことが示される。しかし,定量的に見るとその効果は小さく,軽減税率が家計の金融資産選択に与える影響は限定的である。

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