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証券経済研究 第77号(2012年3月)

「法人関係情報」の範囲及び管理について(下)
―アメリカ合衆国における法制度との比較を通じた一考察―


小林史治(弁護士・筑波大学大学院博士後期課程)
萬澤陽子(当研究所研究員)

〔要 旨〕
 「法人関係情報」(金融商品取引業等に関する内閣府令1条4項14号)等の管理に関する規定(金融商品取引法40条2号,同府令123条1項5号)に相当するものとして,アメリカでは,「重要な未公開情報」の不正利用防止のため,ブローカー・ディーラーに対し,書面化された「方針・手続」の「制定・保持・執行」を要求する規定(証券取引所法15条(g))が存在する。当該規定が具体的に何を求めているかについて,「重要な未公開情報」の範囲と,当該情報の不正利用を防止するための「方針・手続」に係る「制定・保持・執行」に焦点を当て,いくつかの具体的事例を通じて考察した上で,日本の「法人関係情報」の範囲及び当該情報に関する管理等に係る「必要かつ適切な措置」との比較検討を行う。
 まず,アメリカにおける「重要な未公開情報」の範囲については,具体的事例の中で問題となったことはないと思われる。これは,おそらく「重要」な情報の意味が判例法上すでに明らかとなっている,言い換えれば事実・情報の「重要性(materiality)」の基準は,証券取引に関する法全体として同一のものが適用されるため,当該基準が取引所法15条(g)にも妥当すると一般に理解されているものと思われる。これに対して,日本の「法人関係情報」の範囲は,インサイダー取引規制の対象となる「重要事実」よりも一般に広く捉えられているとされているが,両者の範囲を違うものとすることの合理性について,規制の趣旨等から考察を行う。
 次に,「方針・手続」の「制定・保持・執行」については,日本の管理の「必要かつ適切な措置」と比較して一見相当部分が重なるように見えながらも,不公正取引・情報の不正利用防止のための方策,想定される不公正取引の主体,そして規制内容について相違があると思われる。これらの相違がなぜ生じるのかの検討を通じて,日米それぞれで採られてきた制度の特徴を浮き彫りにすることを試みる。

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