トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2011年度 >> 第76号(2011年12月)

出版物・研究成果等

当研究所の出版物の購入を希望される方は、「刊行物購入について」をご覧下さい。

証券経済研究 第76号(2011年12月)

OTCデリバティブ市場になぜ清算集中は必要か?
―流動性リスク防止の観点から―


中島真志(麗澤大学教授)

〔要 旨〕
 今次金融危機においては,店頭デリバティブ市場(OTCデリバティブ市場)における混乱が注目を集めた。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を中心とするOTCデリバティブ市場は,取引の透明性の欠如やカウンターパーティ・リスク管理の不十分さから批判を浴びた。このため,欧米の監督当局では,①電子取引プラットフォームによる取引執行,②清算機関(CCP)による清算集中,③取引情報蓄積機関への取引報告,などを義務付ける方向で市場規制に動いている。
 本稿では,このうち「OTCデリバティブ市場になぜ清算集中が必要とされているのか」に焦点をあてて,規制強化の動きについて分析することとする。清算集中を義務付ける根拠は,一般的には「システミック・リスクの防止」とされているが,この点については規制当局からは必ずしも十分な説明が行われていない。
 本稿ではまず,CDS市場の市場構造やカウンターパーティ・リスクについて概観し,CDSのポジション解消のための方法について解説する。
 第2に,ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズの破綻の過程で何が起こったのかについて,先行研究に基づいて検証する。特に,CDS取引のポジションを解消するためのノベーション(当事者交替)の殺到により,信用不安が生じた金融機関から大量の現金担保が流出し,流動性危機につながったことを指摘する。
 第3に,こうした分析に基づいて,CDS取引におけるCCP義務付けの真の狙いは,こうしたノベーションの殺到とそれに伴う流動性危機の発生を防止することにあるのではないかという点について論述する。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。