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証券経済研究 第75号(2011年9月)

ユーロ危機と銀行の国債保有
―ソブリンリスクと銀行の資金調達リスク―


代田純(駒澤大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 ユーロに加盟する,ギリシャ,アイルランド,ポルトガルでは,ユーロに関わる財政金融政策およびIMF融資によって,国民から批判が強まり,政権が交代している。これは政治的緊張を伴っており,現在の事態はユーロ危機と呼ぶに値しよう。
 ユーロ危機の背景としては,発足当初から加盟国間で経済格差が大きかったこと,ユーロ加盟国の拡大ペースが早かったこと,EU共通財政が制約されており,南欧への配分額が抑制されていること等を指摘できる。しかし本稿が最も重視する要因は,財政収支の逼迫により国債のデフォルト(再編を含む)リスクが高まり,さらに国債の主要な保有者としての欧州系銀行が,資金調達面でホールセール市場に依存する点である。
 銀行の資産構成において,公債(国債を含む)は約5%程度の比率であり,さほど高いとは言いがたい。しかし,国債の保有構造においては,国内外の銀行による保有比率が高い。欧州系銀行の資金調達において,預金は50%程度で日米に比較して低く,他方でインターバンク市場など短期金融市場やカバードボンドなど債券市場への依存が高い。国債利回りの上昇は,銀行のホールセール市場でのコスト上昇に伝播していると見られる。
 ソブリンリスクと銀行の資金調達(funding)リスクは,相互に影響しつつ,現在のユーロ危機の背景となっている。

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