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証券経済研究 第75号(2011年9月)

ドッド=フランク(DF)法とOTCデリバティブ取引規制

佐賀卓雄(当研究所理事・主任研究員)

〔要 旨〕
 2010年7月21日に成立したDF法は,サブプライム問題を発端とした今回の金融システム危機を受けて,その包括的な改革を目指した野心的なものである。特に特徴的なことは,これまで一貫して金融機関の業務規制が緩和されてきたのに対して,ボルカー・ルールに象徴される業務規制の強化を掲げていることである。
 その目的は金融システム危機の再発防止にあるが,そうであれば金融機関の監督体制の効率化を高めるための組織の再編,シャドー・バンキング・システムの資金調達の中心であるレポ市場,そして今回の危機に関連した住宅金融の問題,特にファニメィ,フレディマックのGSEの改革問題がほとんど取り上げられていないのは片手落ちであり,奇異な感じがする。
 それはともかく,DF法の最大の功績はOTCデリバティブに対して初めて本格的な規制を課したことにある。元々は今回の危機に関連してCDS取引の残高が膨大に積み上がり,そのデフォルトの危険性が金融システム全体を震撼させかねないことが直接の契機であったが,次第にOTCデリバティブ全体の規制へと拡大していった。規制はOTCデリバティブ全般にわたっているが,その眼目は透明性の向上とカウンターパーティ・リスクのコントロールにある。透明性の向上は取引についての報告義務を課すことによってエクスポジャの把握を容易にすることである。それによって,監督機関が実態を把握し迅速に適切な対応を採ることが可能になる。また,カウンターパーティ・リスクのコントロールについては,CCPへの清算を集中させることによって,OTCの相対取引という性格からくる個別業者の破綻がシステミック・リスクに転嫁するのを防ぐとともに,担保や証拠金を縮減して効率性を高めることを意図している。
 現状はそれには程遠い状態ではあるが,国際的にもOTCデリバティブ規制に向けた取組みが進捗しており,今後の動向が注目される。

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