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証券経済研究 第74号(2011年6月)

アジア債券市場育成論の再考

佐藤慎一(早稲田大学大学院博士課程)

〔要 旨〕
 アジアにおける債券市場育成は,アジア通貨・金融危機を通じて顕在化したアジアの金融システムに内在する諸問題を解決し,豊富な貯蓄を域内の経済発展に必要な中長期の資金ニーズに結び付けるための重要な方策として推進されてきた。しかしながら,危機後約10年が経過した今なお,アジアの債券市場は総じて公債を中心とした拡大に留まっており,社債市場は企業の資金調達の場として,あるいは,投資家の資金運用の場として十分な機能を提供するに至っていない。これはアジアにおける債券市場育成の主眼が,欧米型市場自由化主義の導入を念頭に,市場インフラを先進資本主義諸国並みに引き上げる供給面に置かれていたことに所以している。この結果,ABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)やABF(アジア・ボンド・ファンド)を通じて,市場インフラ整備では一定の成果がみられているが,裏を返せば現時点までの債券市場育成はその範疇を出るものではない。足許で直面する課題は,「政策的意図と需要のギャップ」を如何に解消していくべきかであり,この観点から債券市場育成は今後,地域の経済・金融・産業構造や,それらを背景とした発行体や投資家の需要をより重視していくことが求められよう。
 本稿では,アジア債券市場育成論を巡るこれまでの論点や債券市場の活用状況を分析し,アジア債券市場育成論が直面する課題を指摘し,今後の取り組みに向けた含意を提起する。

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