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証券経済研究 第74号(2011年6月)

戦時投資信託の誕生

小林和子(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 証券市場における有価証券といえば長い間伝統的な債券,株式,そして証券投資信託の3種類に限られたが,日本では前2種類の時代が長く,投資信託が登場するまでには60年以上の時間が経過した。その理由は中小大衆投資家層がなかなか形成されず,新金融商品の市場導入に作用すべき証券業者の力も弱く,また監督官庁が取引所・証券行政(農商務省系)と金融行政(大蔵省系)に分かれ,どちらも新金融商品の導入に積極的ではなかったためでもある。学者の議論としては少なくとも大正年代末期には投資信託が紹介されているが,これを日本市場で具体化する動きはなかなか生じなかった。
 若干の先行形態(合同・代行証券投資)を見た後,昭和12年半ばに成立した藤本有価証券投資組合が日本の戦前期投資信託の嚆矢となった。ところがこの組合は大蔵省により3年後の昭和15年半ばに新規設定を中止させられ,翌年11月に信託法に基づく戦時投資信託が大蔵省により野村証券・野村信託に認可される。民法組合形式による投資方式を否定して,信託法方式で信託業と証券業との競合を回避させ,また証券引受会社統制会を大蔵省の機能の一部として活用しえたことが,戦時投資信託の成功の要因である。自由市場の最後の段階で誕生し,統制市場の下で開花したのが日本の投資信託であった。

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