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証券経済研究 第73号(2011年3月)

世界金融危機前後における我が国企業のCDSスプレッドの決定要因

岩井浩一(金融庁総務企画局金融研究センター研究官)

〔要 旨〕
 世界的な金融危機を契機にして,クレジットデフォルトスワップ(CDS)市場への関心が一層高まっている。CDS市場が金融危機の遠因の一つとされ,規制の見直しが進められてきた経緯を踏まえると,金融危機の前後におけるCDS市場の価格形成を実証的に考察することは,CDS市場の機能や今後の規制の在り方を考察していくうえでも重要であろう。しかしながら,我が国CDS市場における価格形成に関する実証的な理解はそれほど進んでいない。本稿は,我が国事業法人を参照組織とするCDSスプレッドの決定要因を実証的に検証するものである。スプレッドの決定要因として,構造型モデルから導出される構造変数のほかに,市場全体及びマクロ経済の動向を捉える幾つかの変数も採用した。分析の結果,これまでに報告されていない現象も含めて,CDS市場における価格形成の特徴を見出すことができた。第一に,構造変数は符号条件を満たし概ね有意であったが,CDSスプレッドの変動を十分に説明することはできない。構造変数の他に,市場・マクロ変数を説明変数に加えても,モデルの説明力は総じて低く,我が国CDS市場においてもクレジットスプレッド・パズルが存在しているといえる。第二に,金融危機前よりも金融危機後の方が回帰モデルの説明力が改善するという諸外国には報告されていない現象が確認された。この背景として,金融危機以降になると,我が国CDS市場において諸外国の市場変動が大きな影響を与えるようになったこと等が考えられる。第三に,金融危機後になると,本稿のモデルでは捉えきれていないシステミックな要因がCDSスプレッドの主たる変動要因になった可能性も確認された。これらの分析結果は,我が国CDS市場の価格形成メカニズムの理解に役立つものである。

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