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証券経済研究 第73号(2011年3月)

企業行動に対して中立的な税制―ベルギーのNIDについて―

山田直夫(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 企業の資金調達行動に対する中立性の観点と,経済のグローバル化にともなって個人段階で配当の二重課税を調整することが困難になっていることから,近年,法人段階で負債と株式を等しく扱う税制に注目が集まっている。法人段階において,負債で資金を調達した場合と株式で資金を調達した場合を等しく扱う税制としては,CBITとACEが提案されている。CBITは法人段階で負債利子控除を認めず,個人段階で利子,配当について,非課税にする税制である。一方,ACEは法人段階で負債利子だけでなく,株式の機会費用も課税ベースから控除する税制である。
 CBITについては導入している国はないが,ACEはいくつかの国で実際に導入されている。その代表的な例として,ベルギーのNID(2006年より導入)がある。本稿では,このベルギーのNIDについて,その概要を紹介するとともに,ベルギー経済への影響を,特に海外直接投資の流入額と法人所得税収に注目しながら検討した。本稿の主な結果は以下のとおりである。
 ・ 海外直接投資の流入額をみると非常に多額であり,世界でも上位の水準にある。NIDが導入された2006年は,前年より約71%増加している。
 ・ NIDの導入により法人所得税収が減少することも考えられるが,2006年と2007年は増収であった。
 ・ 分析結果の解釈には慎重にならなければならないが,NIDは税収を減少させずに海外直接投資を増加させたと考えることもできる。

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