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証券経済研究 第73号(2011年3月)

国債の大口売買取引制度、その意義と示唆

岩井宣章(日本女子大学非常勤講師)

〔要 旨〕
 公社債の売買が取引所取引には馴染まないと言われて久しい。現在,東京証券取引所において上場されている債券は国債のみであり,その売買規模も極めて小さい。しかしながら,取引所取引の売買規模が増大を示した時期がある。国債の大量流通に対応し,昭和54年4月に新たな制度「国債の大口売買制度」を創設されており,それが貢献したものである。それは,従来の取引所の売買仕法を柔軟に見直し,登録債による受渡しなどの条件付取引を可能な範囲で取引所取引システムに取込んだものであった。
 新制度は,昭和50年代において銀行の国債売却を受けて増高した証券会社等の玉調整等の場として一定程度機能する。しかし60年代に入っての国債の指標銘柄に偏した流通構造の変化やその後の更なる流通構造の変化の下で,会員制度の制約や投資家相互の売買注文の対当が取引成約の要件という取引所取引の基本的枠組みがハンデとなり,その後急速に売買規模が減少し,意図された一定程度の店頭取引売買ニーズを取引所取引に取込むことができなかった。結局,大口売買取引制度の盛衰が債券取引における取引所取引の役割と限界を改めて示したといえる。
 現在,東京証券取引所では国債先物取引が現物国債を凌駕する規模となっている。国債先物取引は,大口売買取引制度の下で見られた課題の多くを充足していると考えられる。国債先物取引は現物債のヘッジ等の機能だけでなく,最割安の受渡銘柄を通して現物債価格にも大きな影響力を有するようになっている。それは,債券売買における取引所取引の貢献の仕方を示唆しているのかもしれない。

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