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証券経済研究 第73号(2011年3月)

1990年以降の財政膨張と国債発行の特徴

中島将隆(当研究所特別嘱託研究員)

〔要 旨〕
 ギリシャの財政危機が契機となって,主要国では財政健全化の目標が作成されている。2010年6月のG20トロントサミット宣言では,「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組みをつくる」ため,先進国は2013年までに少なくとも赤字を半減させ,2016年までに政府債務の対GDPを安定化または低下させる財政計画を作成することにした。ところが,日本は例外扱いで,財政状態は最悪だから,日本の財政健全化目標は先延ばしにしてよろしい,ということになった。なんとも,不名誉なことである。
 なぜ,日本の政府債務は世界最悪になったのだろうか。振り返ってみると,1990年度には赤字国債依存体制から脱却し,1991年から1993年までの間,赤字国債発行額がゼロとなった。ところが,2010年度の赤字国債発行額は約38兆円,赤字国債発行比率は86%,国債依存度は実に48%である。この間,政府債務残高は急増し,2010年度には国と地方を合わせた政府債務残高は862兆円となる。今日では,持続可能な財政制度の維持が不可能,と深刻な議論が続いている。赤字国債依存体制から脱却して僅か15年後,なぜ短期間に財政赤字が拡大し,政府債務残高が途方もない金額に膨れ上がったのだろうか。
 急激な財政膨張と財政赤字の拡大は,通常,戦争やテロ対策,経済危機など国家が危機的な状況下で発生する。冷戦体制が終了してもテロ対策や国家主権を守るため,今日なお各国は軍事費を削減することができず軍事費の膨張に悩まされている。日本の場合,軍事費の対GDPは1%であり,世界中で最低水準にある。日本は軍事費の膨張から開放されている。また,リーマンショックによって拡張的財政政策が採られたが,これは日本だけでなく各国とも共通している。むしろ日本の場合,海外と比較して財政支出は過大であったとはいえない。
 日本の財政は軍事費の膨張から開放されているにもかかわらず,財政赤字は拡大を続けている。日本の政府債務が世界最悪となった原因,この原因を明らかにするには,歳出構造と歳入構造を分析し,なぜ,財政赤字が拡大していったか,この点を解明する必要がある。以下では,一般会計に焦点を当て,1990年以降における財政構造の特徴を分析していく。

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