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証券経済研究 第72号(2010年12月)

中国金融構造の特徴とその変化

童適平(明治大学特任教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 日本の高度成長期に存在した間接金融優位,オーバー・ローン,オーバー・ボロイングと資金偏在という金融構造の特徴は移行期の中国経済にも存在したが,オーバー・ローンとオーバー・ボロイングは早く解消した。オーバー・ローンとオーバー・ボロイングは基本的に国有商業銀行と国有企業との間に存在した現象で,国有企業の改革と中央銀行再融資から外貨買い介入への中央銀行通貨供給方式の変更が解消の主な原因である。中国では,短期金融市場においての資金偏在は,かつての日本とまったく逆の形で現れている。つまり国有商業銀行は恒常的に資金の運用者で,中小銀行は資金の調達者になる。これは国有商業銀行の豊富な預金源と相対的に乏しい資金運用先とのギャップによるものである。金利自由化を始め銀行改革があまり進んでいないため,この現象は未だに存在する。間接金融優位は政府主導の追越型経済成長に規定され,低金利により守られたものである。
 家計部門金融資産が蓄積するに連れて,資産多様化のニーズが生じ,投資行動が変化しつつある。また,市場メカニズムが浸透するに連れて,国有商業銀行も新設した金融機関も市場原理を重視し,経営合理化を進めるので,金融構造が変化し,現存する金融構造の特徴もやがて歴史的な役割を終えると考える。

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