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証券経済研究 第72号(2010年12月)

英国銀行危機とシステミック・リスク

小林襄治(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 英国では2007〜8年の金融危機で大手銀行を含むいくつかの銀行が破綻し,公的資金注入等で財政赤字を抱え,英国経済は大きな打撃をこうむった。住宅バブルの崩壊の結果であるが,これを契機に金融規制・監督の見直しが進んでいる。
 これには原因の究明を含めて様々な問題があるが,ここでは,英国主要銀行のバランスシート(2007年末)の比較を通して,いくつかの特徴を確認する。すなわち,預貸率の高いこと,トレーディング・投資証券保有の割合が高いこと,負債では預金の割合は低く,社債等に依存する割合が高いことである。しかも国内業務中心の銀行と国際業務中心の銀行ではかなりの相違があり,後者ではとくに預金・貸付以外の資産・負債の割合が高い。これらを米欧の他の大銀行・投資銀行のバランスシートとも比較する。多様な構造が見られ,一般化には無理があるが,大銀行では,多かれ少なかれ伝統的預金・貸付よりも,トレーディング資産・負債,担保取引(レポ・証券貸借),デリバティブ資産・負債のウェイトを強め,投資銀行化している。
 今回の金融危機でシステミック・リスクへの対応が重視されている。だが,ここでは市場型システミック・リスクへの対応を重視する白川,より具体的に「担保取付け」に注目して業態に応じた規制改革を主張する淵田,シャドー・バンキングへの銀行規制とマクロプルーデンスを強調するタッカー,システミック・リスク情報の整備を試みるSIFMA(米国証券業金融市場協会)等の間には,具体的問題では認識が一致しても,基本的考え方の相違が大きい。
 規制改革では中央銀行の権限を強め,中央銀行の流動性供給やマクロプルーデンスの強化をはかる動きが目立つが,これにはモラルハザード問題への対処が前提であり,マクロプルは未知数である。この点は改めて検討したい。

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