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証券経済研究 第71号(2010年9月)

市場・取引所概念の再構築
─PTS規制の現状と課題に関する一考察─(上)


木村真生子(筑波大学大学院助教)

〔要 旨〕
 PTSの出現とは,証券を売買するための執行場所が市場に複数できることを意味する。このため,市場の分裂や市場の透明性,市場監視のあり方などについて看過することのできない問題が生じてくる。
 通常,このような問題をいかにして解決すべきか市場規制上の論点となるが,アメリカやEUなどのPTS先進地域とは異なり,わが国ではこのような論点が具体的に学説に現れることはなかったといいうる。わが国では,売買価格の決定方法を通じて実質的に市場間競争を起こさせない仕組みが長い間採られていたために,こうした状況を改善することに多くの時間が費やされてきたのであり,その結果,ようやく市場間競争の舞台が整ってきた段階にあるからである。
 ところで,カナダの証券市場はトロント証券取引所をメイン・マーケットとする衛星型市場モデルの構造を有しており,日本の市場構造とよく似た構造をもつ。また,アメリカを範としたATS規則をほぼ同時期に発効させている点でもわが国と類似点が多い。しかし,わが国の規則とは対照的に,カナダのATS規則は「市場(marketplace)」という概念の下で,多種多様な取引の執行場所が共存する次世代市場を統一的に把握することを試み,売買の公正性と効率性を確保する包括的な規制枠組みを構築しようとしているところに特徴がある。
 本論文は,カナダのATS規制を概観することにより示唆を得て,今後のわが国のPTS規制のあり方を検討するものである。本号では,まず,わが国のPTS規制の現状についてみた後,PTSの経済上の意味と法律上の意味にずれが生じていないかを確認する。そして,カナダの証券市場の概要から考察を進める。

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