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証券経済研究 第71号(2010年9月)

金融危機以降の邦銀と公社債投資

代田純(駒澤大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 金融危機以降,とりわけ2010年に入り,邦銀の貸出は前年比で減少が続いている。大企業を中心とした企業借入減少が一因であろうが,BIS自己資本比率(バーゼル)規制で邦銀が貸出を抑制していることも影響していよう。他方で,銀行の国債保有は大幅に増加している。2009年第三四半期には,国内銀行の保有国債残高は前年同期比44.2%増となった。貸出,株式保有はバーゼル規制上,リスク資産とされるが,国債はリスクフリーとされている。
 現在,邦銀の不良債権は,歴史的には低い水準にある。ただし中小企業等金融円滑化法により,不良債権の定義が緩和されたことが若干影響していよう。また現在の不良債権の定義は貸出債権だけであり,証券化商品は含まれない。しかし金融危機以降,邦銀の主要な不良資産は債券関係の証券化商品である。2008年度決算で「国債等債券償却」等を「リスク管理債権」に加え,業務純益との関係を試算すると,2008年度は赤字であった。すなわち不良債権の範囲に,貸出債権だけではなく,債券関係も含むと,銀行の基礎的利益である業務純益だけでは償却できてはいない。不足分は株式売却や益出し等によって補填されたと見られる。
 さらに邦銀のバーゼルⅢ(普通株と内部留保による,コアTIER1比率4%)に関する試算が各種なされているが,もっとも厳しい試算では1%未満とされていた。こうした背景から邦銀の増資が続いている。
 邦銀は国債保有を増やしているが,業態別では若干の相違がある。都市銀行では長期債の比率が低く,短期・中期債中心の国債保有である。しかし地方銀行では,長期債の比率が高く,中期・長期債中心の国債保有となっている。邦銀の利鞘は極めて薄くなっており,利回り上昇の観点からは,長期債が選好される。地方銀行など国内基準行については,国債評価損を自己資本(TIER1)から控除しないことが認められており,その影響と見られる。バーゼル規制は邦銀の資産構成に大きな影響を与えている。

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