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証券経済研究 第70号(2010年6月)

金融危機以降の欧州系銀行と不良債権―欧州系銀行の貸出と中東欧問題―

代田純(駒澤大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 本稿は,金融危機以降における銀行貸出と不良債権問題について,欧州を中心に検討するものである。結論としては,2009年決算(2009年12月期)で公表されているデータからは,欧州の銀行貸出と不良債権の発生について,好転しているとは言い難く,回復は2010年以降になるだろう,ということである。
 まず2002年以降での,ユーロ圏における銀行貸出の動向を見ると,2004〜2005年に非居住者向け貸出が急増した。金融危機以降,非居住者向け貸出は減少したが,この部分が2010年現在不良債権化している。またユーロ圏内での非金融法人(企業)向け貸出も低迷している。
 ユーロ圏では伝統的に企業金融は自己金融を基調としてきたが,現在でもこうした傾向は継続している。また製造業大企業ではオランダでの金融子会社経由での資金調達を強めており,銀行離れが決定的になっている。こうした背景において,ユーロ圏での銀行は非居住者(中東欧等)向け貸出を増加させた。
 ユーロ圏の銀行(オーストリア,ドイツ系など)は中東欧に現地法人銀行を開設し,親銀行から貸出した。中東欧における貸出の多くは,外貨建てであり,ユーロ建て,スイスフラン建て等が中心であった。同時に中東欧諸国の為替制度は変動相場制が多く,金融危機以降,現地通貨は対ユーロや対ドルで急低下した。このため現地通貨建てで見た実質負担は,家計でも法人でも急増し,これが不良債権発生の契機となった。
 現在,欧州系銀行の自己資本比率(バーゼルⅡ)では基準をクリアしている。しかしIMFの推計等では,今後の不良債権処理の動向によっては,利益だけでは対処できず,自己資本の取り崩しも予想されている。この場合には,自己資本比率を維持するため,欧州系銀行による増資が相次ぐと見られる。

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