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証券経済研究 第69号(2010年3月)

Business Enterprise Income Taxの基本構造と課題
―みなし正常収益算定に基づく中立課税―


井上智弘(早稲田大学政治経済学術院助手)

〔要 旨〕
 本稿では,近年提案された企業源泉所得に対する中立的な課税システムの1つであるBusiness Enterprise Income Tax(BEIT)について紹介し,これまでの中立課税案からの進展や税制案としての課題について検討する。
 BEITは企業の資本総額に基づいてみなし正常収益率から資本の正常収益を算定し,株式・負債の違いにかかわらず,その正常収益を課税ベースから控除することで,企業源泉資本所得に対して,企業段階で超過収益課税を行う。さらに,企業が発行する有価証券等の金融商品を購入する投資家に対して,その投資額と上述のみなし正常収益率を用いて各投資家に帰属する正常収益を算定し,企業からの収益分配の有無にかかわらず,個人段階でその正常収益に対して課税する。これにより,企業の投資・資金調達決定,投資家の資産選択に対する課税の中立性を実現する。また,自国企業の国外所得を完全合算方式によって課税することで居住地主義課税を徹底し,租税競争の弊害の緩和を試みている。
 BEITが課税の中立性を実現するためには投資家の保有する金融資産についての情報や国外所得についての情報の入手が不可欠であり,みなし収益課税であるため納税原資の問題も生じるなどいくつかの課題は残るが,みなし正常収益の算定や完全合算方式の採用は企業源泉所得への課税システムとして1つの方向性を示すものであり,税制改革案の1つとして検討されるべきである。

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