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出版物・研究成果等

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証券経済研究 第69号(2010年3月)

新規公開株式の売出価格決定方式を考える

福田徹(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 証券の売出価格決定方式には多様な種類が存在する。これらは理論的に導き出されたというよりは,それぞれの証券の特性を考慮しながら取引関係者が時間をかけながら洗練させたものであるといえるだろう。新規公開株式に関するそれについても,世界各国において,時間の経過とともに変更が繰り返されてきた。ただし,この変更のパターンについては多くの国々の間で類似した傾向がある。それは,固定価格方式が主流を占める中で入札方式が導入されたものの十分に普及せず,1990年代以降のブックビルディング方式の台頭によって主役交代が起こったというものである。奇しくも我が国においても同様の軌跡をたどっている。
 この理由としては,新たな売出価格決定方式として利用され始めた入札方式が十分に機能しなかったこと,引受証券会社がブックビルディング方式を選好したことなどが挙げられている。前者については,入札者数が不安定であったことや割高な価格形成が引き起こされたことを指している。これらは,投資家や発行体,引受証券会社の信頼感を失わせるものになったといえるだろう。また,後者については,ブックビルディング方式の引受手数料率がより高かったことや株式の配分に関する裁量を引受証券会社が持てることを理由にしている。ただし,これらについては,売出価格決定方式を選択する上での発行体に対する引受証券会社の強制力はほとんどないとして疑問視する意見もある。

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