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証券経済研究 第67号(2009年9月)

戦間期日本企業における減資―株主主権的な企業システムの一側面―

齊藤直(早稲田大学商学学術院助教)

〔要 旨〕
 本稿は,近年の経済史,経営史分野における企業破綻研究の進展を踏まえ,それらの研究で不十分な企業破綻の量的規模を把握する試みとして,両大戦間期の日本企業における減資の量的規模を明らかにするとともに,株主主権的な特徴を持ったと理解されている当時の企業システムとの関係を念頭に置きながら,その意義を検討することを課題とする。検討結果は以下の通りである。第一に,鉱工業大企業の資本金異動に関する集計データを用いた検討によれば,戦間期における減資の規模は極めて大きく,減資による払込資本金の減少は期初の払込資本金総額の約半分に達した。第二に,主要な減資の事例を検討したところ,戦間期の減資は損失処理にともなう減資がほとんどであった。第三に,減資の原因となった損失の内訳としては,鉱工業企業の本業に関する資産項目である固定資産勘定や手持品勘定の資産評価損が多額にのぼった。第四に,詳細な分析は今後の課題であるが,資産評価損計上の背景には,株主への分配を過度に重視し,減価償却の抑制や資産評価益の計上を続けたことで資産額が実態から乖離して過大化したという財務面の問題があったと推測される。以上から,戦間期における大規模な減資の頻繁な発生は,株主主権的な企業システムにおける負の側面の顕在化であったと考えられる。

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