トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2009年度 >> 第66号(2009年6月)

出版物・研究成果等

当研究所の出版物の購入を希望される方は、「刊行物購入について」をご覧下さい。

証券経済研究 第66号(2009年6月)

起債市場統制と戦後債券市場の原点

天羽正継(東京大学大学院博士課程)

〔要 旨〕
 本稿の課題は,戦後日本に特徴的な債券市場の仕組みが,戦時期のメカニズムを受け継ぎつつ戦後復興期に形成されてゆく過程を明らかにするとともに,戦時期と戦後における債券市場構造の連続面および断絶面について考察することである。
 戦時期には計画経済の下,債券利率は国債利率を最低として完全に統制され,社債市場は国債市場と分離される形で計画化がなされた。同様の計画化は金融債と地方債についてもなされたが,これは安定的な起債と消化の実現と共に,国債消化政策に影響が及ぶ可能性を防ぐことが目的であった。国債利率の低位固定化と国債への優先的起債割当というメカニズムは,終戦後に引き継がれることとなった。
 終戦後に戦時期の起債計画は撤廃されたが,逼迫した起債市場を打開するべく起債条件の統制が実施されることとなった。実際には,国債と戦後新たに登場した復金債の発行条件が市中金利をはるかに下回る水準に固定され,それらとの関係で地方債と社債の条件が受動的に決定されたため,市中金利に対応した弾力的な条件設定がなされず,起債市場の回復が妨げられた。また,国債と復金債は,戦時期と同様に政策当局による積極的な消化対策がなされたのに対し,社債は戦時期とは異なりそうした対象とはならなかった。ここに,発行条件の低位固定化と公債および金融債への優先的起債割当てという,その後の債券市場が有することとなる特徴的な仕組みが形成されたのである。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。