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証券経済研究 第65号(2009年3月)

会社法と社債資本の新展開

三浦后美(文京学院大学大学院経営学研究科教授)

〔要 旨〕
 会社法(平成18年5月1日施行)では,独立した社債資本制度は「普通社債」の規定のみに収斂された。「新株予約権付社債」並びに「転換社債型新株予約権付社債」は,実質的・個別的な条件として「普通社債」の商品設計の規定に留められてしまった。なぜ,このような社債資本制度の複雑な改正が行われたのか。
 また,会社法上のすべての会社(株式会社,物的会社[合名会社・合資会社・合同会社])は,社債を自由に発行できるように改正された(会社法676条)。併せて,会社法施行時に既に有限会社であった会社(「特例有限会社」)も会社法の株式会社と看做され,社債の発行が可能となる。なぜ,会社法では発行主体の範囲が大幅に拡大させたのか。
 日本では,社債権者保護の観点から重要な役割を果たしてきた財務制限条項は,1996(平成8)年1月に従来の適債基準が完全撤廃されたことに併せて,自由化された。会社法では財務制限条項が「財務上の特約」と名称を変更された。1996年の自由化されて以降,それまでもっとも重要な財務制限条項(「財務上の特約」)であった“純資産維持条項”“利益維持条項”“配当維持条項”といった条項を付した社債はほとんど発行されていない。担保提供制限条項はその対象とする国内債務の範囲を狭めながら運用されている現状にある。会社法の社債資本制度改革は,社債投資家にとって,その制度設計の理解をより困難な状態での投資を強いているものと考えられるものである。
 会社法では従来の「社債管理会社」を「社債管理者」に名称変更し,社債管理者の設置は会社法第702条に定めた。実態的には,改正前商法第297条但し書の規定を利用した社債管理会社不設置債(いわゆるFA<Fiscal Agent,財務代理人>)の発行が一般化していることによって,会社法における社債管理会社(社債管理者)の原則設置義務は事実上,有名無実化している。財務代理人は,発行会社に代わって,社債発行に関する事務取扱を委託されているにすぎず,社債権者間の利害調整を担う責任はまったくない。

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