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証券経済研究 第65号(2009年3月)

変貌する日本の国債保有構造

中島将隆(当研究所特別嘱託研究員)

〔要 旨〕
 日本の国債保有構造の特徴として,従来,次の諸点が指摘されていた。まず,量的金融緩和政策以後,日銀保有国債は増加を続けている,という理解である。量的金融緩和政策が解除されても日銀は国債買いオペを続けているから,そして,国債売りオペも行っていないから,日銀の保有国債が増加するのは当然ではないか,というものである。次に,公的部門の保有比率が諸外国と比較して著しく高い,特にアメリカと比較して著しく高い,公的部門とは対照的に家計部門と海外部門の国債保有比率は,海外と比較しても著しく低い。こうした特徴は,長らくの間,日本の国債保有構造の常識として繰り返し指摘されてきたのである。
 ところが,2009年1月に公表された2008年第3四半期の資金循環統計をみると,常識とは異なり,日本の国債保有構造に大きな変化が生じている。
 まず,日本銀行の保有する国債は2005年第4四半期の93.9兆円をピークにして,以後,保有額は減少を続け,2008年第3四半期には59.2兆円となっている。保有比率をみると,2002年第4四半期は15.7%に達していたが,以後,保有比率は減少を続け,2008年第3四半期には8.7%にまで減少している。この間,日銀の国債買いオペ額は2002年10月から月間1兆2000億円となり,以後,買いオペ額に変化はない。にもかかわらず,日銀保有国債は減額を続けているのである。
 次に,公的部門についてみると,2007年第4四半期を境に大きな変化が生じている。2006年第4四半期の公的部門の国債保有額は294.4兆円であったが,2007年第4四半期には95.8兆円に激減し,国債保有比率も43.1%から14.1%にまで減少した。日本の国債保有構造に大変化が生じたことになる。
 家計部門と海外部門についてはどうか。この二つの部門については,この数年,一貫して増加を続けている。家計部門の国債保有額は2001年第4四半期には11.5兆円であったが,2007年第4四半期には35.9兆円となり,2008年もこの水準を維持している。海外部門も同様で,2001年第4四半期には21.6兆円であったが,2007年第4四半期には47.9兆円となり,速報値の2008年第3四半期には53.7兆円に急増している。
 以上に見てきたように,日本の国債保有構造は,今日,大きな変化を遂げつつあると言わねばならない。なぜ,こうした変化が生じているのか,資金循環統計の数字を追いながら,その理由を検討してみたい。

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