トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2008年度 >> 第64号(2008年12月)

出版物・研究成果等

当研究所の出版物の購入を希望される方は、「刊行物購入について」をご覧下さい。

証券経済研究 第64号(2008年12月)

期待インフレ指標と金融政策―英米比較の観点から―

須藤時仁(当研究所研究員)

〔要 旨〕
 本稿では,ハイブリッド型の期待所得に基づくIS曲線とニューケインジアン・フィリップス曲線(NKPC)で表される経済(新しいケインズ経済学モデル)を前提に,中央銀行が最適裁量金融政策を実施すると仮定してテイラー型の金利ルール(政策反応関数)を導出し,そのモデルに基づいて期待インフレ率と金融政策との関係,さらに中央銀行の独立性について考察した。対象は1993〜2006年のイギリスと1998〜2006年のアメリカである。
 まず,期待インフレ率を具現化したインフレ指標は金融政策の参照値として実際のインフレ率より有用か否かという論点を検証した。その結果,英米両国とも,期待インフレ率を具現化したインフレ指標は金融政策の参照値として有用であることが示された。ただし,実際のインフレ率指標より明白な優位性があるとは言えない。
 次いで,中央銀行の政府からの「独立性」を確保するための制度的措置は,金融政策を表す政策反応関数に反映されているか否かという論点を考察した。この論点は2つの側面から考察し,第1はイギリスの制度変更であり,第2はインフレ・ターゲットの枠組みを表明しているイギリス(BOE)とそれを表明していないアメリカ(FRB)の比較である。分析の結果,法律に明記されたからといって常に中央銀行の独立性が顕著に高まるわけではないこと,インフレ・ターゲットを金融政策のレジームとして表明しているか否かと独立性の強弱とは関係がないことが示された。
 以上の分析結果が日本の政策に示唆する点は2つある。第1は,期待インフレ率の指標を積極的に金融政策の参照値,情報変数として活用すべきということである。その前提として,当該指標の精度向上のために物価連動国債の市場を整備し,流動性を高める必要があろう。第2点目は,日本銀行は敢えてインフレ・ターゲットを採用する必要はないということである。重要なことは,金融政策上の重要な目標を明確に定め,その政策運営の透明性を高める努力を続けることである。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。