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証券経済研究 第60号(2007年12月)

最適な負債満期構成と企業資産流動化の効率性
―債務不履行によるコントロール権移転効果の分析―


土村宜明(横浜国立大学大学院研究生)

〔要 旨〕
 本稿は,いつ投資家が企業のコントロール権(企業の意思決定権)を取得するかを調達時の契約に記述できない状況において,株主価値だけでなく経営者の私的利益を加えた企業活動による社会的価値を最大化するには,どのような負債契約が最適となるかを理論的に検討した。既存研究に対する貢献は,経営者の私的利益の設定を大きく拡張し,より多くのステークスホルダーの総余剰を最大化するための最適契約を示したことである。モデルでは,キャッシュフローが実現する前にプロジェクトの継続価値が観察可能となり,経営者にはプロジェクト継続によって私的利益が発生する状況を想定する。キャッシュフローは立証可能であり,私的利益は立証不可能かつ移転不可能であると仮定する。発生する問題は,プロジェクトの成功確率が小さいために中止するのが効率的であっても,経営者には継続を選択するインセンティブが働くことである。投資家にはその逆の問題が発生する。このため,事業を継続するか,資産を流動化して中止するかという企業の意思決定が効率的に履行されるには,コントロール権を経営者から投資家に効率的な水準で移転させる必要がある。このような効率的なコントロール権の移転は,短期債と長期債の併用により調達し,短期債による債務不履行の水準を長期債の発行によって調節することで達成される。

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