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出版物・研究成果等

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証券経済研究 第58号(2007年6月)

金融のグローバル化と金融規制・監督システム
―EUの金融安定化機能―


春井久志(関西学院大学教授)

〔要 旨〕
 金融の国際化や規制緩和,さらには情報通信技術の急速な進歩により金融機関と金融市場のグローバル化が進展している。国境を越えて多数の支店や子会社を業務展開する金融コングロマリットの誕生は,金融システム安定を維持することの重要性や一端金融危機が発生した時の「伝染効果」のリスクを増大させている。それにもかかわらず3つの金融システムのセーフティネットは一国内に限定されており,グローバル化が立ち遅れている。(1)流動性不足に陥った銀行に緊急的に資金援助する最後の貸し手機能は,自国の政府と納税者に説明責任を負う各国の中央銀行に負託されている。(2)預金保険制度も各国の多様性が残り,利害対立のケースも起こりうる。(3)破綻金融機関を救済するために注入される公的資金も,各国の政府にゆだねられている。金融機関に対する規制・監督権限はもとより,以上の3つのセーフティネットも一国内に制限されている。金融危機が発生する前に金融機関の救済コストの分担についての国際協調に関する「事前の合意」が不可欠である。また,各国金融当局による平時の情報交換・共有も重要である。しかしこのような国際協調は国際的な資金移転を伴い,かつ各国間の利害対立を生むケースもある。いずれも政治的には解決が困難な問題である。この袋小路を打破するためには「人為的なミニ危機」を発生させ,金融機関救済のシミュレーション(financial fire-drill)を実施することが考えられる。

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