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証券経済研究 第58号(2007年6月)

イタリア銀行セクターの構造と変容
―統一銀行市場への道のりと今後の展望―


中川辰洋(青山学院大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 1990年代以降イタリア銀行セクターは整理・統合の道を歩み変貌をとげてきたが,そのプロセスは2005年の銀行M&Aスキャンダルをきっかっけによりいっそう弾みがつき,かつてない変容の渦中にある。従来の外資系銀行を排除して進められてきた「閉鎖的」銀行再編成から,外資系銀行の参入を容認した「開放的」再編成への転換がその主因であり,現在,ヨーロッパでもっとも注目される銀行市場といわれている。だがこの国の銀行セクターが英仏などと比肩するためにはなおクリアしなければならない課題もすくなくない。銀行間の株式持合いネットワークや地域間の対抗意識などがそれであり,これらは部外者の参入を制約する要因として依然無視できない。イタリア銀行セクターはこうした問題にどのように対処し,どのような解決を目指しているのか。本稿では,この国の銀行セクターの再編成と変動のプロセスを評価するとともに,その将来を展望する。

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