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証券経済研究 第58号(2007年6月)

イングランド銀行の金融調節方式の変更(2006年)について

斉藤美彦(獨協大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は2006年5月にその金融調節方式の変更を行った。その目的としては,(1)オーバーナイトの市場金利がBOEの公定レート(1週間)と整合的に形成されること。イールドカーブはフラットで日々・日中の変動もあまりないほうが望ましい。(2)銀行組織の流動性管理のための効率的で安全かつフレキシブルな枠組み。通常時においても,混乱時においても競争的な短期金融市場とそれが適切な場合には中央銀行通貨が使用できること。(3)簡素でわかりやすく透明な運営上の枠組み。(4)競争的で公平なポンド建短期金融市場の4点が挙げられている。
 具体的な枠組みは,完全後積み方式の準備預金制度の新規導入であり,それには付利され,準備額も対象金融機関が任意で設定できるというのが特徴である。これによりBOEはマクロ的な準備需要の予測をより高い精度により行うことができるようになった。この準備預金制度は,付利されることからレギュラトリィタックスではなく,制度設計から準備率操作という概念も消失している。あるのは準備預金制度という枠組みである。そしてその枠組みの下においてBOEが過不足なく資金を供給するということになっている。またこの制度においては超過準備にもペナルティが課されることにより量的緩和は実行がほぼ不可能な制度設計となっている。
 政策金利は準備預金への付利金利であるが,これを期間1週間のレポオペの適用金利としていることから,BOEは期間1週間の金利の決定権限を有している。そしてペナルティレートおよびスタンディング・ファシリティの金利により短期金利の上下限が画されるという制度の下で,オーバーナイトレートはほぼこれと同水準となるように調節されてきている。資金供給の中心は短期レポオペであるが,銀行券の対応資産として長期資産の割合を増やしてきており,その流れを維持するようにしている。ただしギルト債のアウトライトオペについてはBOEは非常に慎重な導入方針をとっている。
 日米およびヨーロッパの中央銀行による金融調節の枠組みは,近年似通ったものとなってきているが,今回のBOEの金融調節方式の変更は欧州中央銀行(ECB)の調節方式を意識し,それとの類似性の強い方式となっている。

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