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証券経済研究 第57号(2007年3月)

ブラジルの債務再編交渉と予算制度改革―財政を巡る民主化と均衡主義の相克―

水上啓吾(東京大学大学院経済学研究科博士課程)

〔要 旨〕
 本稿では,1988年憲法において規定された民主主義的な予算統制のあり方が,債券市場からの側圧,カルドーゾ政権の政策スタンスに規定されながら,空洞化していく過程を論じた。PPAという中期的な財政計画のもと,各年度の予算編成をおこなう新制度は,従来の予算制度がもたらしてきた累積債務を防ぐものとして期待されるとともに,民政移管後の民主主義の象徴として導入されたものであった。しかし,インフレの抑制のために必要とされた財政収支の改善は,予算編成過程の中で実現するのではなくインフレ抑制計画の一環として実現する。いわば,「財政の金融化」が進展したのであり,その後も財政収支の改善を目的として頻発された臨時的措置は,予算制度および議会統制を着実に形骸化していくこととなった。97年,98年の財政収支の改善が国民に与える影響は,歳出の削減や増税に余りある実質給与所得の上昇をともなった94年に対し,大多数の国民からの支持を得られず,そのまま99年に通貨危機を迎えたのである。議会統制が効力を失い,臨時的な財政収支の帳尻あわせが行なわれることは財政民主主義の観点からは好ましい状況ではないのはいうまでもないが,加えて国際金融危機によって予算法が容易に変更しうるという制度設計は国家財政運営の自律性をも揺るがすことになりかねない。

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