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証券経済研究 第57号(2007年3月)

海外投資家に係る日本国債利子非課税制度と国際課税政策

野村容康(独協大学経済学部助教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 本稿の目的は,海外投資家に係る国債利子非課税を中核とした,わが国のポートフォリオ利子課税制度について,国際課税をめぐる最近の学界での議論を踏まえながら伝統的な租税政策論の立場から再評価を試みることである。こうした税の規範的視角から,わが国の非居住者利子課税制度が意味するところを検討することは,海外投資家による国債保有の促進という国債管理政策上の目標から離れて,わが国の国際課税政策としての整合性を維持するうえで重要であると考えられる。
 今日,国境を越えた資本取引の急激な拡大は,ポートフォリオ投資の経済的特性と課税技術上の問題と相俟って,ポートフォリオ所得への課税をますます困難にしている。このような資本所得課税の危機的状況は,世界的な税の引下げ競争を加速させ,租税国家の基盤を揺るがしかねない。そこで,いかにして海外投資所得への課税を制度上担保するかという点が各国の租税政策の重大な焦点となるが,現代の国際課税論によれば,ポートフォリオ所得については,投資家の居住国で課税を行う「居住地原則」によるべきであり,そのための重要な鍵として情報交換の役割を評価するという見方が主流となっている。
 そうした世界的な国際課税政策の潮流のなかで,わが国の海外投資家に係る国債利子非課税制度の意義を抽出すれば,(1)純粋な居住地原則を指針とした,ポートフォリオ利子課税の実行可能性を示している,(2)国境を越える利子に対する非課税状態をなくすために,源泉徴収制度を効果的に活用している,(3)そうした源泉徴収と本人確認の徹底を通じて,わが国居住者による租税回避の抑制が図られている,といった点があげられる。その一方で,わが国がポートフォリオ利子課税について完全な居住地原則を実現するには,(1)国債以外の公社債・預貯金の利子に対する源泉徴収の撤廃,(2)居住者のポートフォリオ利子に関する外国税額控除の見直し,(3)国内の資料情報制度等の整備・拡充,(4)租税条約による情報交換ネットワークの拡大,といった課題が重要となる。

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