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証券経済研究 第56号(2006年12月)

ITが支えるグローバル市場間競争と東証の課題

中西実子(マッキンゼー・アンド・カンパニー、マネージャー)

〔要 旨〕
 世界の資本市場では,主要証券取引所が,グローバルスケールで市場間競争を繰り広げ,統合を進めている。東証,ひいては日本の資本市場は,従来は法規制や商慣行の違い,物理的な距離等の要因が防波堤となり,海外との競争に直接さらされずに済んでいた。だが,今後はそうはいかない。最近の環境変化が証券取引所のグローバル化を一気に加速したからだ。
 中でも耳目を集めたのは,2006年前半に起きた,東証のシステム障害と,ニューヨーク証券取引所グループとユーロネクストとの合併にみる取引所グローバル化の新展開である。この二つは,一見交わるところがなさそうだが,実は,東証と日本の資本市場が置かれた待ったなしの状況を明らかにしたという点で共通する。本稿では,これら二つの出来事に焦点を当てて東証の現状と課題を分析し,東証が今後目指すべき方向の提言を試みたい。
 資本市場のグローバル化は,取引所を含む日本国内の体制整備状況如何によらず,不可逆的に進んでおり避けることはできない。その中で日本の取引システムは世界水準に照らして非効率であり,このままでは日本が今後も世界の金融センターの一つであり続けることは難しくなる。日本経済の将来のために東証の躍進,体質強化を強く望みたい。ただし,グローバルで戦う態勢が整わないうちに,グローバル競争に巻き込まれることはリスクが大きい。また,東証の自助努力だけに期待するのでは,日本経済にとって全体の最適解を導くのは難しいのではなかろうか。本稿では,既成の取引所制度や行政をも視野に入れ,読者と問題意識を共有したい。

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