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証券経済研究 第53号(2006年3月)

富裕層の危険回避度

水野博志(福岡大学教授)

〔要 旨〕
 本論文では,現実の投資家行動において富が増加するにつれて危険回避度がどのように変化するかを富裕層に焦点を当て経験的に分析してみた。筆者はジャパニーズインベスター誌との共同で行った個人投資家のアンケート調査に基づき,富裕層と非富裕層とのサンプルを作り,2つのサンプルで危険回避度の違いを分析してみた。富裕層の方が非富裕層より危険回避的な傾向があることがわかった。この結果は理論的な予測とは整合的ではない。なぜそのようになるのであろうか。筆者は投資家のロジックは投資家に聞くしかないと考え,富裕層の投資家11人のインタビュー調査を行った。インタビューの結果,危険選好は,富だけでなく,年齢,インターネットの利用に結びついていること,富そのものについては富が増えるにしたがって危険回避度が低下する傾向があることがわかった。次ぎにインタビューの結果をふまえて,アンケート調査の全データについて回帰分析を行った。全データの統計分析では,年齢の効果,インターネットの効果を考慮に入れると,富が増加するにつれて危険回避度は低下するとはいえないことが明らかになった。結論としては,危険回避度は個人の属性によって決まり,年齢,富によって大きく変化するようには思われないということである。

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