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出版物・研究成果等

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証券経済研究 第52号(2005年12月)

実現可能な中立的企業課税―ACE制度の提案―

井上智弘(早稲田大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕
 日本や欧米で,企業の経済活動に影響を与えない,中立的な法人税に対する研究が進んでいる。しかし,中心的に研究されているキャッシュ・フロー法人税は,現実の制度として適用するためには問題があり,必ずしも実現可能性の高い課税方式とはいえない。他方,近年提案されたACE制度は,実現可能性が高く,キャッシュ・フロー法人税のような実現可能性に影響を与えるような問題をもたない。しかしながら,日米の中立的企業課税研究ではほとんど取り上げられていないため,本稿ではACE制度を定式化し,キャッシュ・フロー法人税に比べて実現可能性の面で優れた課税方式であることを,以下の3点で理論的に示した。
 1点目は現行制度からの移行にかかる費用がキャッシュ・フロー法人税に比べて低いこと,2点目は税収がキャッシュ・フロー法人税と比べて安定していること,そして3点目が,企業が損失を出した際に,次期以降への課税ベースの損失分の繰越が容易であることである。
 以上の点から,ACE制度はキャッシュ・フロー法人税よりも実現可能性の高い制度であると考えられるため,今後の中立的企業課税の導入に関する議論では,キャッシュ・フロー法人税だけではなく,ACE制度も含めて検討されるべきであろう。

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