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証券経済研究 第51号(2005年9月)

1990年代初頭のシティコープの経営危機と再生

西尾夏雄(埼玉大学大学院博士課程)

〔要 旨〕
 本稿は1980年代から1990年代初頭にかけて起こった米国の金融危機における,監督当局の対応とシティコープの改革施策を検証した。
 積極的な業務拡大路線で米最大手の銀行となっていたシティバンクの持ち株会社であるシティコープは,累積債務国問題が発生し得意の海外業務が停滞すると,国内の不動産融資や企業買収関連融資を拡大させた。しかし米国の景気悪化はその拡大路線を頓挫させ,多額の不良債権を残した。収益性と健全性が落ち込んだシティは,1991年の「連邦預金保険公社改善法(FDICIA)」によって自己資本不足と判断され,当局の事実上の監督下に置かれる。
 しかし二年間に集中した経営再建策の青写真を打ち出す事により,シティは大規模な資本調達を達成し,その事業のリストラクチャリングを遂行した。再建策を成功させた1994年には,当局による経営介入から脱却している。
 シティコープの再建例は,同じく金融危機に直面した邦銀の改革施策との「経営論」としての比較研究を進める上での基盤となりえる。しかし,本稿では「金融システム論」の観点から分析している。すなわち,当時の米国の監督当局が金融危機を解決するために採択した「金融の再規制」が,いかに個別金融機関の改革を促したかを,同グループの経営危機と改革施策を通じて検証する。それは,日本の金融危機を事後検証する上でも,いくらかの示唆を与える。

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