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証券経済研究 第50号(2005年6月)

ドイツ郵貯民営化とポストバンクのバンキング戦略
―ドイツ金融システムにおける位置付け―


黒川洋行(関東学院大学助教授)

〔要 旨〕
 ドイツの郵便貯金事業民営化については,1990年の連邦郵便の再編を経て1995年からポストバンクが株式会社としてスタートした。そして,ポストバンクは1999年にドイツポスト株式会社によって買収され,その子会社となっている。
 民営化に際しては,企業の収益性の追求との関連で,過疎地における郵便局の統廃合が問題となる。この点に関し,ドイツでは,「郵政ユニバーサルサービス令」によって,郵便局の数的設置基準が明確化されている。
 ポストバンクは,1999年以降,積極的なM&A戦略を展開し,めざましい企業成長をみせている。ただし,ポストバンクの資産規模は国内第16位であり,同行の資産のうち,連邦および州政府など公的部門に対する債権は合計しても約300億ユーロ(およそ3兆8,000万円相当)にとどまる。したがって,ポストバンクが連邦および州レベルにおける公債管理政策等に与える影響力は,日本の郵政公社と比較しても非常に小さい。
 むしろ,ドイツの金融システムにおいては,公法上の銀行すなわち貯蓄銀行グループや信用協同組合グループが,連邦および州・地方自治体のハウスバンクとして機能し,それらの公的金融に対して大きな影響力をもっている。
 ポストバンクは,確かに民営化後の明確な企業戦略に基づいて一民間銀行として企業価値を高めることに成功しているが,金融システムにおける位置付けは,日本の郵貯のシステムとは大きく異なるといわざるをえず,地方自治のファイナンスに対する大きな影響力,また国民的な貯蓄機関という観点からみても,むしろ貯蓄銀行グループや信用協同組合グループが日本の郵貯システムのもつ機能に近いとみることが可能である。

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