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証券経済研究 第50号(2005年6月)

EU新規加盟国の為替レジーム―拡大EUと「ユーロ化」―

勝悦子(明治大学教授)

〔要 旨〕
 2004年5月に10カ国が新たにEUに加盟し,本年4月にはブルガリアとルーマニアの新規加盟を欧州議会が承認して,順調に行けば2007年1月にはEU加盟国は27カ国に膨れ上がる見通しとなった。新規加盟国の多くは旧中央計画経済諸国であるが,90年代には様々な市場経済移行プロセスを経てきた国である。これら諸国に共通しているのは,所得水準が現EU加盟国に比べ一段と低いこと,中央計画経済のもとで法整備や金融制度など社会システムの改革が未だ進行中で制度が未成熟なこと,EU加盟を見据え巨額の外資が流入していること,などの点にある。これら諸国は国際資本市場にアクセスするエマージング諸国であり,これら諸国の最適な通貨制度を考えるには,外生的ショックが実物ショックか金融ショックか,あるいは固定相場制における金融政策上の制約,対外外貨建て債務から生じるfear of floating,最適通貨圏の理論など様々なファクターを考慮する必要がある。エマージング諸国である新規加盟国のうち,小国であるバルト三国のエストニアとリトアニアがすでにERM IIに参加し「ユーロ化」を志向している。一方で,「大国」については,バラッサ=サミュエルソン効果,金融システムの強度,金融政策の意思決定プロセスの変化,最適通貨圏の条件などを考え合わせると,「ユーロ化」にはしばらく時間がかかると思われる。新規加盟国の「ユーロ化」の便益と費用については,小国では便益が大きいと考えられるが「大国」では必ずしもその便益が大きくはないからである。「ユーロ化」が達成されたとしても,外生的ショックが起きた場合の政策上の費用はEU諸国が背負わなければならず,それによって生じる経済上の問題をどのように解決していくのか,「ユーロ化」後がむしろEUにとっての正念場になろう。

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