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出版物・研究成果等

証券経済研究 第46号(2004年6月)

日本における年金課税と確定拠出年金―イギリスとの比較―

代田純(駒澤大学教授当所客員研究員)

〔要 旨〕
 昨年末の議論によって,わが国の年金税制が動き始めた。老年者控除を2005年から廃止し,公的年金等控除を縮小することとなった。同時に,確定拠出年金の拠出上限の引き上げも認められることとなった。本稿はイギリスにおける年金課税と確定拠出年金の動向を探り,日本と比較することを通じて,日本の年金税制に示唆を見出そうとするものである。
 イギリスは最近まで好景気が続き,財政収支も黒字であった。このため高齢者控除などもインフレ調整以上に拡充されてきた。イギリスの年金制度は私的年金としての職域年金が中心であり,公的年金は付随的地位にとどまっている。このため私的年金へは手厚い税制優遇が認められる一方,公的年金については拠出金も所得控除されていない。イギリスでも私的年金への税制優遇による所得税の減収はかなりの規模に達している。公的年金による所得比例年金が廃止され,代わって2001年よりステークホルダー年金が導入された。確定拠出年金であるステークホルダー年金には個人年金と同様の税制優遇が認められ,導入2年で100万人の加入者に達した。
 日本は景気低迷が続いてきたため,所得税の税収が落ち込み,国債依存度も上昇した。所得税税収が減少するなか,所得税の各種控除が日本では大きく,各種控除を縮小すべき,との議論も強まっている。この一環として老年者控除廃止や公的年金等控除の縮小も決定されたが,確定拠出年金は拠出限度が引き上げられた。基礎年金国庫負担の引き上げや,確定拠出年金拠出限度引き上げには,公的年金課税の強化が前提になると見られる。日本での確定拠出年金は企業型で規約数707(2004年1月現在)に達するなど普及しつつあるが,運用面では預貯金が40%近くに達するなど投資教育面の課題も多い。

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