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出版物・研究成果等

証券経済研究 第43号(2003年9月)

通貨危機後の東アジアにおける債券市場をめぐる動向

横山史生(秀明大学助教授当所客員研究員)

〔要 旨〕
 東アジア諸国においては1997年通貨・金融危機を契機に,従来は企業の資金調達が銀行を通 じての外貨建てかつ短期の借入に過度に依存していたことの弊害等が指摘され,代替的資金調達手段としての債券市場への期待がクローズアップされるようになった。通 貨危機前に世界銀行やAPECにより示されていた各国国内債券市場の育成に向けての方向性等を背景に,各国で国内債券市場の整備が進められてきている。また,国際資本移動に係るホーム・バイアスの存在や,域内資金の有効活用の観点から,単に各国国内市場の発展とその集積ではなく,東アジア域内で債券形態によるクロスボーダーの資金還流を目指す指向も出てきている。これらの指向を政策的に実現していくことを目的として,様々な政府間協議の場で検討が進められており,2003年には,ASEAN+3枠組みにおける「アジア債券市場イニシアティブ(ABMI)」の形成,各国中央銀行の協力による「アジア債券基金(ABF)」創設,第2回アジア協力対話(ACD)における「チェンマイ宣言」など具体的な成果 があった。これら一連の動向は,「アジア債券市場イニシアティブ(複数)」の相互補完的な動きが,通 貨危機後の東アジアにおける域内金融協力という形を取って進んでいるものと位 置づけることができる。今後に向けては,東アジア各国の中小・零細企業の資金調達を念頭に置いた信用保証制度の拡充や資産担保証券の活用,通 貨ミスマッチを回避する観点からのバスケット通貨建て起債の実現等が,新たな課題となっている。

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