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出版物・研究成果等

証券経済研究 第42号(2003年6月)

イギリスにおけるアナリスト行動と規制

須藤時仁(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 2003年2月,イギリスの金融サービス機構(FSA)はアナリスト(証券業者)の利益相反問題に対応した規制の修正案および新しい規制案を諮問した。新しい規制案では,アナリストの管理・監督体制や報酬体系などが証券業者に拘束力のないガイダンスとして定められており,アメリカの規制に比べて緩いものとなっている。本稿では,イギリスのアナリスト行動について企業利益の予想形成を中心に検証し,その結果 からFSAの採るべき対応を考察した。
 先行研究に基づく検証から,アナリスト行動,特にその予想形成について多くの性質が明らかとなった。それらを総合すると,「基本的にアナリストの予想には市場環境に影響された心理的バイアスがあり,市場環境が良好な時期にはこの心理的バイアスに,企業との関係を良好に保つために意図的に形成された戦略的バイアスが加わり楽観的バイアスが増幅される」という推論が成り立つ。
 この推論の上に立ってアナリスト規制を考えるとき,重要なことは規制によって意図的な戦略的バイアスは抑えることはできても,心理的バイアスは抑えることはできないということである。したがって,イギリスにおいても,戦略的バイアスを排除するためにアナリストの管理・監督体制などの規定は証券業者に拘束力のある規則として定めるべきである。一方,予想に係る心理的バイアスは「市場に固有のリスク」と認識したうえで,例えば,「正確な」企業情報を開示させる制度の整備,投資情報に関する消費者(投資者)教育の充実によって対処すべきであろう。

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