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出版物・研究成果等

証券経済研究 第42号(2003年6月)

英国金融制度の変貌―マクミラン・ラドクリフ・ウィルソン委員会とその後―

小林襄治(専修大学教授当所理事)

〔要 旨〕
 産業への資金供給の問題を軸に金融制度のあり方を議論したウィルソン委員会の報告が出されたのは1980年のことであり,早くも20年以上が経過した。現時点で回顧すれば,この報告書がその後のイギリスの金融制度の形成にいかなる意味を持っていたのかははっきりしないが,ビッグバンや住宅金融組合の銀行への転換,金融監督機構の改革,大銀行の再編等によって,21世紀の初めまでにイギリスの金融機関の構造は大きく変化した。伝統的証券業者やマーチャント・バンクは姿を消し,旧4大銀行も再編された。
 このような動きをもたらした要因は複雑であるが,本稿ではこれまでのイギリス金融制度にかかわる代表的公的調査報告である『マクミラン委員会報告』,『ラドクリフ委員会報告』,『ウィルソン委員会報告』を読み直し,まず,これらの委員会が何を問題にしたのかを検討する。その上で,各委員会報告の後の20年間程度に金融システムにどのような変化が生じたのかを,主要金融機関の資力と証券(国債と株式)時価総額の推移を見る中で確認する。これにあたっては,経済規模の拡大との比較を重視し,どの機関や証券が実質的に拡大したのかを明らかにする。
 この作業に際してはかなり荒っぽいデータを利用するが,この狙いは効率的とか,望ましい金融制度とかが存在するのかを検討するためである。上述の有名な委員会でも,金融制度というより,金融政策の検討に終わったようである。この点を明らかにしつつ金融制度を検討する視点を探ぐりたい。

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