トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2003年度 >> 第41号(2003年3月)

出版物・研究成果等

証券経済研究 第41号(2003年3月)

財務省証券の流動性と制度改革

磯谷玲(宇都宮大学助教授当所客員研究員)

〔要 旨〕
 1980年代以降,アメリカ連邦政府の財政赤字は巨額の市場ファイナンスを必要とし,他面では各種金融商品のベンチマークとして利用される財務省証券市場を形成した。ベンチマークとして利用される理由は,そのリスク・フリーの性格と高い流動性にある。しかし「ソロモン・スキャンダル」に端を発する制度不信や,単年度収支の黒字転換といった事態を契機として,財務省証券の流動性に関する一種の懸念が表明されるようになった。
 財務省・議会は納税者負担を最小にすることを目的として,1986年政府証券法や1993年政府証券法修正およびこれらの法に基づく諸規則の制定を通じ,規制を強化し,効率的な財務省証券市場の形成に取り組んできた。流動性の問題に対する対処もこうした枠組みの中で行われる。
 保有構造においては,家計・個人がその比重を低下させ,海外投資家は比重を増大させた。このような保有構造が流動性問題への対処にも影響を与えている。
 財務省は前述の枠組みの中で,あるいはそれに応じて(1)流動性の基礎であるより広範な保有を促進するための入札制度の改革(これはソロモン・スキャンダルへの対応でもある),(2)連邦財政の黒字転換に起因して生じてきた流動性の懸念への対処である「買い戻しプログラム」を実施している。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。