トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2002年度 >> 第40号(2002年12月)

出版物・研究成果等

証券経済研究 第40号(2002年12月)

日本企業における純粋持株会社形態の採用動機―組織形態の採用に影響を与えるファクターの考察―


大坪稔(佐賀大学助教授)

〔要 旨〕
 本稿の目的は,カンパニー制との比較のうえで,いかなるファクターが純粋持株会社形態(ここでは,純粋持株会社及びその傘下企業を総称して純粋持株会社形態と呼ぶ)の採用に影響を及ぼしているのかについて実証的に明らかにすることである。これまで,純粋持株会社がいかなる機能を果たしえるのかについて様々な主張がなされてきたが,その多くはカンパニー制や事業持株会社などにおいても代替可能であると考えられた(下谷[1995])。しかしながら,日本企業における純粋持株会社形態とカンパニー制の計画・採用というアナウンスメントに対し,株式市場は異なる反応を示している(大坪[2001])。これは,両組織形態が同様な機能を有してはいないことを示唆している。そこで,本稿では,どのようなファクターが両組織形態の採用に影響を与えているのかについて分析を行い,純粋持株会社形態を採用しようとしている企業の特質を明らかにする。
 実証分析から得られた結果は,同業他社との比較分析において,(1)親会社の事業の収益性が低い企業ほど純粋持株会社形態を採用する傾向にあることが明らかとなった。またカンパニー制との比較分析において,(2)親会社の収益性に比べ,傘下企業の収益性が相対的に高い企業ほど純粋持株会社形態を採用する傾向にあること,(3)キャッシュ・フローが逼迫している企業ほど純粋持株会社形態を採用する傾向があること,(4)親会社の事業規模が大きな企業ほど純粋持株会社形態を採用する傾向にあること,が明らかとなった。このことより,傘下企業を含む「グループ全体の事業の再構築」を必要とし,かつ「市場からの資金調達の必要性」が生じている企業ほど純粋持株会社形態を採用する傾向にあると考えられる。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。