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出版物・研究成果等

証券経済研究 第38号(2002年7月)

ドイツの経済政策理念と証券市場改革

相沢幸悦(埼玉大学大学院教授・当所客員研究員)

〔要 旨〕
 ドイツは,欧州通貨統合をめざす経済構造改革の一環として証券市場改革を断行してきた。これは,ドイツ的なものを残しながら,証券市場改革を進めるものである。本稿は,ドイツ特有の経済政策理念をみた上で,金融システムの特徴と証券市場改革の概要を明らかにするものである。
 戦後ドイツの経済政策理念は,社会的市場経済と呼ばれる。これは,競争原理を導入するが,アメリカ型の競争原理万能の市場至上主義と違い,社会的公平性は国家が確保するというものである。金融にもこの原理が貫徹してる。
 従来,欧州大陸諸国の企業金融は,銀行借り入れが主流であった。しかし,1992年の域内市場統合における証券市場統合を定めた「投資サービス指令」によって証券市場へのシフトが急速に進んだ。ドイツでは94年7月に同指令にもとづいて「第二次資本市場振興法」が制定された。同法は,証券市場の国際競争力を強化し,機関投資家だけでなく個人投資家にも利用しやすい市場を作り上げようとするものである。98年3月には「第三次資本市場振興法」が制定された。
 1991年1月にユーロ単一通貨圏が成立するとドイツの証券市場はますます高揚した。その前提は,80年代から進めてきた資本市場振興策と個人投資家の証券市場への参入が拡大してきたことである。そして,総仕上げとして2002年1月18日に投資家保護などを主要な内容とする「第四次資本市場振興法案」が政府草案として公表された。

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