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出版物・研究成果等

証券経済研究 第38号(2002年7月)

ユーロ相場の変動とその背景

中島精也(伊藤忠商事金融部門チーフエコノミスト)

〔要 旨〕
 欧州統一通貨ユーロが誕生して以降,約2年間はM&A絡みの資本流出が原因でユーロの下落トレンドが続いた。しかし,その後は市場介入の実施や資本流出の一服から,ドルに対してはボックス圏内でのもみ合い相場となっている。
 ユーロの将来については市場統合と通貨統合の結果,競争が激化して経済体質が強化されるので,ユーロが強くなるという見方が根強い。しかし,依然としてユーロ相場の本格回復を妨げる幾つかの要因が根強く残っている。最大の問題は硬直的な労働市場と税制である。
 大陸諸国では相変わらず労働市場が硬直化しており,外国企業にとり採算を重視した効率的な工場配置や店舗展開が進めにくい。フットワークの良い資源配分ができなければ,資本はユーロ圏には流入しない。税制については多国籍企業に対する二重課税の問題や,雇用面でローカルスタッフへのシフトを強要する余り厳しい税法解釈を適用する税務当局もみられ,外国進出企業からの評判はすこぶる悪い。
 政治的には2004年に予定されているEUの中東欧・地中海諸国への拡大が経済合理性を歪める恐れがあること,また英国のユーロ加盟問題など,ユーロの本格上昇の前には克服すべき難題が多いのが実情である。

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