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出版物・研究成果等

証券経済研究 第37号(2002年5月)

株式上場に伴う効果の計測―イベントスタディによる統計的整理―

長瀬毅(一橋大学経済研究所非常勤講師)

〔要 旨〕
 本稿の目的は,株式上場によってどのような効果が企業にもたらされるかを統計的に把握することである。上場における効果やコストは様々なものが考えられ,それらが企業の上場行動に与える影響については理論的にも実証研究においても整合的な解説はなされていない。本稿では上場に伴う企業の資金調達行動の変化とそれに伴う金融機関との関係の変化,調達された資金がどのように運用されたか,および上場に伴う所有構造の変化についてイベントスタディを用いて検証する。主要な結論は以下の通りである。まず上場に伴って経営パフォーマンスや設備投資の低下がみられ,負債の返済とポートフォリオの拡大,借入制約の緩和と資金調達コストの低下,initial ownerによる企業売却行動といった事実が観察された。これらは先行研究で示唆された結論と整合的なものである。しかし,理論仮説や他の実証結果とは異なる事実も得られた。メインバンクなどの特定の金融機関との融資を通じた関係は上場後も維持されること,上場後は一般的業容が拡大し調達された資金は手元流動性として保持されたこと,上場によって適債基準をクリアしたあと社債の発行による大規模な資金調達が行われ,これが借入を代替した可能性のあること,などである。

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